みなさん、閉じ込め症候群って聞いたことありますか?

これは、何らかの障害や外傷による刺激が引き金になって、身体だけでなく、時には目やまぶたまでも動かせなくなり、
一方で、意識はしっかりとあることから、自分の思いを伝えることができず苦しむ状態のことを言うのだそうです。

そんな状態の人とも言葉を交わすことができる「音のないコミュニケーション」の一つが、今回ご紹介する「指談(ゆびだん)」です。
貴重な機会をいただき、言葉を発せられず苦しむ人達の思いを少しでも届けたいと10年以上活動を続けていらっしゃる、まきのじゅんこさんに話を聞かせてもらいました。

「指談」ってなに?

指談は、筆談や手話・ボディランゲージなど声を発さないコミュニケーション方法の一つ。
ただ筆談や手話と違う点は、障害や年齢・発達の違いなどに関係なくどんな人の思いも引き出せることにあります。

というのも指談の方法はさまざまで、思いを聞きたい相手の指を持ってかすかな動きを頼りに読み取ったり、逆にこちらの指を持ってもらって動きを読み取ったりと、相手の障害や状態に合わせて行われます。場合によっては指以外の反応を探すこともあるのだと言います。
「例えば『今日着ているお洋服は好きですか?』という質問をするとして、本当にそのお洋服が好きだと目がキラキラしたり、表情が明らかに違ったり、身体のどこかが少しだけ反応したりするんですよね。そういったものを根気よく観察していくと、その人だけのYesのサインを見つけられるのです」

じゅんこさんが実際に指談でお子さんと会話をする様子を、私も動画で見せていただきました。
なんだかまるで魔法のようで、相手のお子さんも自分の気持ちが伝わるのが嬉しくて仕方ないという様子が画面越しにも伝わってきました。

指談でお話しするまきのじゅんこさん

そして、じゅんこさんが指談で会話をする際に心がけているのは、身体に痛いところはないか、困っていることはないかなど、少しでも毎日をより良くする問いかけをすることなのだとか。
「喋れない方は『どうせ伝わらないだろう』と諦めていることも多いんです。でも指談で思いを聞けるようになると、その方の不快な部分を取り除くお手伝いができるだけでなく、ご家族との関わり方にも良い変化が生まれてくると信じています」

どんな人にも想いがあることを知って欲しい

私が動画を見た時「魔法みたい」と思ったように、じゅんこさんはとても器用に相手の思いを読み取っていきます。それについてじゅんこさんは「おそらく私は脳幹が活性化していることで、指を繋がせてもらうだけでスムーズに情報共有ができるのではないかと思っています」と答えてくださいました。

これを聞くと自分には難しいのではないかと思ってしまう方もいるかもしれませんが、じゅんこさんと話していくうちに一番大切なのは「上手に指談すること」ではないんだと気付かされます。

「寝たきりの人や生まれた時から障害があって言葉を発せない人、生まれたばかりの赤ちゃんにも伝えたい思いがある。それを家族や周りにいる私たちが知ることが一番大切なのではないかなと思うんです。言葉は発さない、わかりやすく表情には出せないけれど、嬉しいや悲しいなどの感情が同じようにあることを、多くの人に知って欲しいと思っています」

言葉を話せない状態にあるどんな人にも、必ず同じように思いがあると気付くこと。そうすると、今まで自分の内側の中で閉じ込められていた感情が少し外に出て、気持ちが少し楽になったり、嬉しい気持ちになれたりと、ポジティブな変化が生まれるでしょう。それを見て家族や周りの人も少しホッとした気持ちになれたり、笑顔が増えたりと良い循環が生まれるきっかけになるはずです。仮に多くの言葉を交わすことができなくても、「誰の気持ちも取り残さない」というこの考え方が私たちの共通認識になることで、きっとこの世界はより良いものになっていくのだ、とあらためて考えさせられました。

指談に直接触れられるイベント「指談で広がる私たちの世界」香川で開催!

2024年4月6日(土)、香川でじゅんこさんのお話を直接聞けるイベントが開催されます。


イベントを主催する「まんでがんはっぴー」の発起人の方も、実は声を出さないコミュニケーション方法によって救われたお一人なんです。あらゆる感覚に話しかけ、意識を見つけてあげることの大切さを知っていたからこそ、10年前に突然の脳内出血で倒れてしまった旦那さんの意識を感じることができたのだそうです。そんな奇跡のコミュニケーションツールをもっと多くの人に知って欲しいと、今回のイベント開催を実現されています。

興味のある方、お近くの方はぜひ会場に足を運んで、その目で奇跡の瞬間を見ていただきたいなと思います!
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